MS-06 ザク・モビルスーツの謎

メカニックデザイナー大河原邦男先生の手になるMS-06ザク。
くーっ、カックイー。
ザク全身

当時、荒唐無稽の代名詞で、小学校高学年以上になると
バカバカしくて見てられないと酷評されていた巨大ロボットアニメ。

その巨大ロボットアニメをシリアスなドラマの舞台とするべく、
時代設定を宇宙開発途上の戦時中とし、
その舞台に巨大ロボットが登場する理由をより説得力のあるものにする小道具として配置され、
禍々しくもカッコ良く登場した、ジオン公国軍制式兵器、モビルスーツ・ザク。

第一話から、連邦軍守備隊を翻弄し、
連邦軍新開発モビルスーツの部品を破壊するついでに、民間人虐殺を繰り広げ、
その強力さ、恐ろしさを遺憾なく発揮し、
一気に子供達の意識を作品世界に引きずり込んだ立役者。


この「巨大ロボット」を兵器然として見せるのに成功せしめた、すばらしいデザイン。
軍用塗装としてよく使われるオリーブドラブであろう、ダークグリーンの機体色、
カメラ然とした一つ目、
よく分からないが、追加装備を想像させる全身を這い回るホース、
ローマ軍の兵士を思わせる腰の分割アーマー、
その全てが、禍々しく、いかにも兵器然とした演出がなされていて、
いまだにザクを超えるデザインのモビルスーツを私は知らない。(ナンチャッテ^^;)

さて、そのデザイン上の特徴として、何よりも目立つのは、左右非対称であるということ。
左肩にはショルダーアーマー。
ショルダーアーマー
いかにも痛そうなイガイガが三つも生えております。

コレの用途は見た通りそのまんま、
ショルダーアタック
通称ショルダーアタックと呼ばれる、体当たり攻撃。

コレは、ジオン軍きってのエースパイロット、シャア・アズナブル少佐が得意とする、
モビルスーツによる、殴る蹴るなどの文字通りの「格闘」戦の業の一つです。

しかし、このような使用法には、左腕ユニットの破損、
最悪の場合、左腕が肩からモゲ落ちるという危険が、常に付きまといます。
また、敵に密着するという非常に危険な状態での攻撃なので、
回避運動込みの、高レベルの機体操作が必要とされます。

実際にこの攻撃を劇中で見せたパイロットは、シャア少佐以外に
デニム曹長、ガデム艦長、ククルス・ドアン軍曹の3人だけです。
このうち、マトモに攻撃できてるのはガデムさんのみ、
残りの二人は、ほぼ特攻です。

さて、右肩ですが、
こちらにはL字型に曲げられた四角い板が装備されております。
シュルツェン
並みのデザイナーならこの部分をもっと凝ったカタチに作ってしまうところですが、
流石に大河原先生は天才です。

このいかにも野暮ったい、簡素な形状が、
機能追及にはなりふり構わない、兵器特有の設計思想を思わせ、かえってリアルに見えます。
また、この取り付け方が、
第二次大戦当時のドイツ軍戦車に装備されていたシュルツェンを思わせて、
より強く無機質で危険な兵器臭を放っております。

で、これの機能は、当然「防弾」なんですが…、
なぜこのような場所に、半固定状態で装備されているのか?

というのは、ここにこんな物があると、銃器を扱うにも、通称ヒートホークと呼ばれる、熱による溶断兵器を扱うにしても「邪魔」になるということです。
ジャマだナ〜

なぜ、どういう設計思想によって、このような形で追加装甲を装備するに至ったか…?

ここで考慮されるべきはザク・モビルスーツの構造と機能です。

構造については、
富野監督自身の手による小説版に、ザクのメインエンジン、
熱核反応炉(核融合炉)といわれていますが…、これが腰にあると記述されています。
さらにソコから追加の動力パイプが生えています。
また、移動のための機能部品としての脚部、それを駆動するための最も需要な部分、股関節。
これらを敵の側面からの攻撃から守るために装備したのではないか…。

このくらいのことは、私でも想像が付きます。
しかし、ではなぜ、左側にも装備されていないのか?

ここにはザクの機能が大きく関係しているのではないかと考えられます。

ご存知、モビルスーツというのは汎用性が高い兵器として有名です。
逆に言えば、ごく一部の機能に特化させることが難しいとも言えます。

そのせいかどうか分かりませんが、
ザク・モビルスーツには、
ガンダムの頭部にあるバルカン砲のような固定武装がありません。
ガンダムさん

常に、モビルスーツ用の銃器、刀剣(?)を腕に装備しなければ、戦えません。
(前述のとおり、一部のエースパイロットは殴る蹴るで対応可能だとは思いますが…^^;)
不自由だ

つまり、両腕を失うと兵器としての機能の大半を失うことを意味します。
負け惜しみをっ
(固定武装があっても、腕に付いてちゃ同じですね^^;)

というワケで、腕ユニットを少なくとも片方は残そうと…、そういう設計思想ではないでしょうか。
逆に言えば、片腕までなら失ってもいい…、
もっと言えば消耗品?とまでも考えられているのではないか?

ここで思い出されるのが、ショルダーアタック攻撃。
左腕を失うかもしれない攻撃方法…。
つまりは、左腕は失ってもいい部品として位置付けられているのではないか…?
そうです。左腕は最初から消耗品として考えられているのです。

ここに、左側に追加装甲がされてない理由があるのです。
シュルツェン防御

左側の胴体のウイークポイントは、消耗品の左腕で…
左側は…

左腕で防御ズン!A
ということではないでしょうか?

行くぞ!

それ行けー

戦闘!


作戦終了

ザッ

夕日
ガンダムのメインのストーリーには出て来ない、多くの戦場ではこんなことが…?